NYで3日間開催されたハッカソン「Playcrafting + Microsoft 2016 Global Game Jam Site!」に参加してみた→優勝した・・!(ハッカソンと私の気持ち編)
以前、Global Game Jamへ気楽に参加していた様子を書いたのですが、あれよあれよと巻き込まれ参加することになったので、そのあたりの気持ちや、どのようにハッカソンしたかを書いてみました。
チームビルディングのやり方とそれが辛すぎた件
それはいきなり始まった。
「まず最初に好きな色を考えて、その色に名前をつけて。その名前をつけたキャラはどんな性格なのか考えて。そして同じ色ではない人を3人見つけて。10分間。はい、どうぞ!」
げっ・・。一体何が始まったのだろうか・・。
そのとき実は英語があまり聞き取れず、話すお題についても半分ほどしか分からず、なのに急激に周りと話さなくてはいけない展開に。
とりあえず空いてそうで、優しそうな人を探す。話しかけてみる。
でも会場がうるさくて英語が全く聞き取れない。まずそもそもお題が聞き取れてない・・。話しかけられない。
そして、終了。
「さあ、10分間どうでしたか?では次にスキルの話を聞いて。そしてチームを作って、そのチームでゲームジャムに参加して。チームは最大5人なのでそれ以内で。子供を入れるのを恐れないで!ぜひ!10分間。はい、どうぞ。」
会場がうるさいし、英語が聞き取れない。辛い・・辛すぎる・・。なんでここに来たんだろうか・・。ワークショップだけだと思っていたのに・・・・。なんでこれをやっているのだろうか・・・。
周りではどんどんチームが出来上がっていく。
どうしたらいいのか分からない・・会場出たい・・・でも出づらい・・。生きるのが辛い・・・。
とうとう諦めて席に座る私。
そんな中、マイクロソフト社員の方が、どんどんチームビルディングを手伝っていく。
「このチームは足りないスキルの人はいない?何?デザイナーがいないの?デザイナーの人~~~!このチームに入って!」
パワフルだなぁ。ほんと、アメリカ人って感じ。
そこの感覚は意外と冷静であった。
そして、たまたま目の前にその社員の方来て、問いかけた。
「みんなーーー!チームのない人はいない?大丈夫?」
なぜか、なんとなしに、その人に助けを求めてしまう私。
「私特に何もできないんですけど~・・。チームもないんですけど~・・。」
社員さん「そんなこと言わないで!!さっきのプレゼンでも何もない人が素晴らしい事をするって言っていたでしょう。」
私「はぁ・・」(でも実は英語もできないから、ないどころかマイナスなんだよなぁ・・)
するといきなり・・
神のような人「よかったらうちのチームに入る?」
私「!!!」
それがのちのチームリーダーとなるケビンとの出会いであった。
もしかして最弱チーム
ケビンは実はオリエンテーションが始まる前、気さくに色々な人に話しかけており、私にも簡単に自己紹介をしてくれていた人物であった。
ケビン「僕たちのチームはね〜ブレイクダンサーを探しているんだよ!ダンスはできるかい?」
一体どういうことだ・・。というかまず英語が聞き取れない・・。
私「HAHAHA!!」(聞き取れない自分、受けるw)
混沌である。
ケビン「僕たちのチームは、僕とここにいる13歳の若い弟と、さっき初めて会ったケミという女性とその息子だよ!」
私「なんでも大丈夫です。よろしくお願いします。」
チームが決まった。
いや待てよ・・チームは子供二人とその母親、ケビン、そして英語の不自由な外人(私)か・・・!
やった!!
これはギスギスしなさそうなチームじゃないか!
なんてラッキーなんだろう。
私は楽観的である。
周りを見ると、みんなゲームが好きそうで、バリバリ開発しそうな大人のチームばかり。
だがその時も、あんなチーム入ったら絶対期待に応えてあげられないよ。このチームに入れて心からよかったと思っていた。
ただ今思えば、メンバーのステータスだけ見れば、参加チームの中で最弱と言ってもおかしくなかったかもしれない。
どんなゲームを作ろうか
そして、ブレインストーミングが始まった。
マルチプレイがいい!RPGも好き!Ritualってなんだろう?アクションもいいよね!などなど。子供も大人も活発に発言。
私はあまり考えがまとまらず、というか英語についていくのに必死で、ただ、マルチプレイがいい、テーマのRitualは絶対に忘れないでおこう、とちょいちょい挟んでおくので精一杯だった。
その時は私はまだ俄然、チームビルディングでの心への衝撃を引きずっていたのだった。
また同時に、チームメンバーは全員黒人で、彼らの英語を聞き取るのが非常に難しかった。
一方話し合いの場では、子供の意見も子供扱いせず、大人の意見も現実を見据えたような意見ではなくて、とても良い話し合いと案が出た。素晴らしいことだと思う。見習いたい。
そして出てきた意見をあっという間にケビンがまとめ、ゲーム案ができた。
む・・・何だこれ・・この段階で既にすごく楽しそうじゃないか!!
なぜか急に自信が出てきた。
それと同時にこのチームを非常に愛おしく思えてきた。入れてくれてありがとう。
このあたりでやっと、それぞれのスキルについて話すことになった。
私はアート担当、ケビンの若き弟もアート担当、母親はhtmlとcssを独学でやったことがあるということで開発担当、その息子はおそらく7歳くらいだろうか、ケビンの機転で音楽担当、そしてケビンが開発を担当することになった。
このチームはどう考えてもケビンが鍵を握っている・・。
ケビンの正体
意外とサクサクと作るゲームが決まったので、ではもう作り出そうという話に。だがこの段階で20:30。マイクロソフトが21:00には閉まるので、ここではいったん終わりにしようということになった。母息子は帰路に着くことになった。
ケビン「オフィスが近くにあるから、僕ら(ケビンと弟)はそこで作り出すけれど、一緒に来る?」
私「YES」
なんとなくイエスと言ってしまった。
ケビン「ではタクシーに乗ってとりあえず行こう」
私「!!(これがニューヨーカーか)」
私は極貧なので、タクシーには絶対に乗らないのだ。
10分ほどタクシーに乗り、着いたところは、なんと駐車場だった。
英語が聞き取れないにもほどがあるが、オフィスに行くのじゃないのか・・?そう思っていた時
ケビン「朝は路上に止めているとお金を取られるから、この駐車場に止めているんだ。実際オフィスはもう近いよ」
私の不安は顔に出ていたようだ。
ほどなくしてケビンの車が登場。
これは・・・メルセデスじゃないか!
とても驚いた。ケビン、実は金持ちだったのか・・!
そしてオフィスに到着。
オフィスも、やはり、信じられないような環境だった。
ゲームを開発している会社とのこと。ただスケールが、違いすぎた。
ものすごく大きなオフィスに二人だけが働いているという。
作っているのはサッカーのゲーム。
映画館級の大スクリーンがあり、10人で同時に対戦できるものだ。
ほんの数時間前まで、Game Jamに参加したことを死ぬほど後悔していたのに、この変わりようは何だろうか。人生分からないものである。そんなことさえこのイベントは教えてくれた。
ケビン「何飲みたい?ビールもあるよ」
私「水ください」
遠慮した。
そして制作開始。
アートを担当する私とケビン弟で少し話し合う。
ケビン弟「ゲームはピクセルアートで作ろう」
何という賢明な判断であろう。私もドット絵なら描けそうな気がする。
私としてはなんとなく何を作るかリストアップたり、テイストの意識を揃えたり、どこを担当するか決めたりしたかったのだが、全然うまく伝えられなかった。
二人だけだし、まぁ細かいことはいいかと思った。
それにしても彼は天才少年だろうか。クオリティの高いドット絵をどんどん作っていく。
私も足を引っ張るまいと、見よう見まねで作っていく。
このゲームのアートディレクターは君だよ。と心の中で勝手に弟子入りした。
一方ケビンは着々と開発を進めているようであった。一人でどんどん開発を進めていくケビンは、魔法使いのようだった。
23:30を過ぎ、私は非常に眠たかった。
毎日学校が8:30からあり、いつも23:30には寝ているため、普段はもう完全に寝ている時間なのだ。
ケビン「ココア飲む?」
ケビン弟「飲みたい」
私「大丈夫です」
ケビン、ココアを持ってくる。
私「もう帰ろうかと思っています」
ケビン「よし、じゃあ今日は終わろう」
ココアの前に言うべきであった。
こうして1日目が終わり、再度ベンツに乗せてもらい、彼らの帰路の途中で降ろしてもらった。
相変わらずとても眠かったのだが、何とかやっていけそうな気がして、嬉しくて走って帰った。
2日目、ケビンたち来ない
朝食が無料で出るため、朝一でマイクロソフトへ。
パンやマフィンなどが大量に置いてあり、これまた貧困にあえぐ私はこぶし大ほどのパンやマフィンを6つほど食べた。
最近は食べられない日が多いので、食べられる時に食べておかなくてはという意識のせいか、満腹中枢が不思議なことになっているようだ。
まだお腹に余裕はあったのだが、人としておかしい気がしたので食べるのを止めた。
朝食を食べている時に、母息子に会ったので、昨日何をしたか報告をしつつ、ケビンたちを待った。
だが、彼らは一向に来なかった。
とりあえず開発する場所は早いもの順で好きな会議室を取れるということだったので、場所だけは確保した。
彼らもいないので、私たちもぼけぼけとしていた。ワークショップも開かれていたので、それに参加するなどしていた。
ただ実は、その日の11時までにチームをGlobal Game Jamのサイトに登録しないと、参加を認められないという決まりがあった。
なのにそれでも、私たちはぼけぼけしていた。
10:40。ケビンたちはまだいない。さすがにサイトの登録だけはこの時点でやった。
11:00。ケビンたち到着。来ないなんてありえないと分かっていたよ。
できてきた
昨日に引き続き、黙々と作業。
みんなこれを見て、とケビンが途中経過のゲームを見せてくれた。
これは・・・とても面白そうじゃないか!
私たちの中で期待が高まっていった。
それにしてもケビンは一人で開発していて、偉い。
音楽担当の少年(7歳)もとても良いアイディアを出した。
「みんなの声を効果音にしよう」
とても素晴らしいアイディアである。もちろん協力した。
他のチームの様子
大きな会議室で作業をしていたため、もう一つの他のチームも同じ部屋で作業をしていた。大人ばかり5人のチームだ。全員ゲームが好きそうな顔をしている。
「ルールはこうしよう」「水は火に強く草に弱い・・相関図を描こう」「世界観はこうしよう」
会議室のホワイトボードに壮大な絵が描かれていく。
なんというスケールの大きいゲームを作ろうとしているのだろうか。
そして驚くことに、ただ全員話しているだけだった。
誰か何かしたほうがいいのではないのだろうか?
私でさえその状況では、時間内にゲームが出来上がらないことが分かった。
そういえば先ほど、こちらのチームで子供がゲームに対して意見を言っているのをケビンがしっかり聞いて、説得しているのを見て、「あっちのチーム子供に説明してる。うけるw」のような態度を取っていた気がしたので、私は非常に腹が立っていた。
やはりケビンの素晴らしのみが際立つ。本当にチームメンバーに恵まれて良かった。
ゲームの制作は順調に進んだため、その日はオフィスに行くことなく、2日目が終了した。
実は私は、正直この時点ですでに寂しさを覚えていた。
なぜなら、明日になったらこのチームで作業するのは終わりになってしまうからだ。
3日目、ケビンの正念場
朝昼晩としっかりとご飯が出るので、私の食生活は著しく改善した。たが依然、満腹中枢はおかしいままで、毎食ものすごい量を食べてしまう。
そして食事を終えるタイミングは、人としておかしくないかという判断のもと行われる。
この日の朝食も、昨日より一つ多い7個ほどのパンを食べ、終了させた。
作業を開始してから3日目、アート担当は二人いるため、ほとんど作るものがなくなっていた。私は作り終えてとても満足していた。
あとは開発だ。
ケビンがほぼ一人で行っているのだ。あの神のようなケビンもさすがにピリピリしてきた。
チームメンバーの母親も息子の調達した音楽をゲーム内に入れ込むという開発を担当し、見事やってのけた。
本当にあとはケビンの作業だけだ。というかほとんどすべてをケビンがやっているのだが。
私たちがあまりにも他ごとをしていたため、ケビンにゲームのデバッグをするよう言われた。確かにおっしゃる通り。こちらから申し出ず、ヤフー知恵袋をずっと読んでしまっていて、申し訳なかった。
できた
ついに、できた!
締め切りは15:00だったのだが、14:40の段階でこれ以上開発するのはやめると判断した。
過去に締め切り10分前に軽いバグを直そうとしたら、すべてが動かなくなったトラウマがあったそうだ。ケビンはGame Jamの常連だった。
横のチームの人々も、いいゲームができたね!お疲れ様!と言ってきた。何目線なんだよ。と思ったが、素直にありがとうと言っておいた。
ちなみに彼らは最後までずっとおしゃべりが絶えなかった。好きなゲームの話が盛り上がっていたようだ。そういう楽しみ方もあるのかもしれない。
プレイタイム
参加したのは40弱のチーム。そのチームが一部屋に集まり、それぞれお互いのゲームをプレイしあった。
私たちのチームのゲームはマルチプレイのゲームであったため、大変盛り上がった。これもアメリカだなぁと思った。みなさん反応が良い。
ルールを英語で説明するのがとても大変で、私は全くうまくできなかった。
一人の女性に私が説明したのだが、理解してもらえず、引きつった顔で途中で去られたのは心を抉られた。ごめんなさい。
説明は無理だと思ったので、他の出来る限りの事をした。PCの電源を確保したり、ゲームをスタートさせる環境を整えたり。
また、この時もやはりケビンが類い稀なるカリスマ力を発揮し、マルチプレイのため規定の人数がいないとプレイできないのだが、目の前を歩いている人に小気味好く声をかけ、いつもあっという間に人数を揃えていた。
ケビン、キャッチの技術まであるのかよ。
他のチームのゲーム
途中、自分たちのゲームを離れ、他のチームのゲームも少しだけ見た。
クオリティの高いものから、一生懸命作りましたという気持ちが伝わってくるもの、全然できていないもの(隣のチーム)まであった。
一つ、音ゲーをプレイしたのだが、私のセンスが全くなく、クリアするのに15分くらいかかってしまって、ずっと占領してプレイしてしまったのが、いたたまれなかった。
結果発表
上位6位が発表されることになった。
私は出来上がりに満足していたのと、プレイタイムの盛り上がりを見て、正直上位6位以内には入れる自信があった。
次々と呼ばれていくチーム、スクリーンに映しされるそのチームのゲーム。
あれ・・こりゃクオリティ凄すぎないか。
どう考えても2日では作れなさそうなゲームまであった。
諦めそうになったが、一度興奮した体はそんなにすぐに冷静にならなかったため、結局ずっと興奮していた。
そして・・・
私たちのチームが優勝した。
Xbox重い
発表の後はすぐに全員の前でデモプレイ。全員から祝福の言葉をかけられる。
興奮はしていたが、なかなか信じられず、オーマイガーと言うしかなかった。
オーマイガーがとてもアメリカっぽいなぁと思って一瞬自分に笑いそうになった。
一位の賞品であるXboxを受け取った。とても重い。本当に重い。感動の重みとかじゃなくて、物理的に重い。これを持って日本に帰れるのだろうか。不安がよぎった。
かくして、私たちのチームは優勝した。
勝因は?と聞かれるとケビンと答えたくなるが、一番最初に考えたゲーム案の段階で、すでに面白くなりそうな予感がすごくしたというのは、大きい理由だと感じる。
自分たちは面白いゲームを作ってるんだ!という自信が、私たちチーム全体を終始包んでいたのだった。
↓もらったXbox one
↓作ったゲーム
Pray Play ~The valley of cowlie sacrifice~ | Global Game Jam
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