フィラデルフィア美術館群のひとつでブルース・マウのデザインについての特別展示で学ぶ
以前、フィラデルフィア美術館(Philadelphia Museum of Art)に行ってきましたと記事を書きました。それはそれでとても楽しかったのですが、その隣にあったペレルマンビルディングにて期間限定のデザインに関する展示を行っており、またも美術館で学べるデザインということで、紹介します。
Perelman Building
フィアデルフィア美術館のチケットを購入すると、周りにある美術館も全て同じチケットで回ることができます。そのうちの一つがこちらの美術館。それほど大きくはなく、1時間もあれば簡単に回ることができます。
Work on What You Love
建物の中にもいくつか展示があったのですが、そのうちの一つがデザインに関する展示でした。
Bruce Mauの「Work on What You Love」という展示です。
Bruce Mauって?
ざっくり説明すると・・現在56歳のカナダ人の男性でグラフィックデザイナーです。建築から物からアプリまで何でもデザインしています。
↓公式ページもおしゃれ
Home | Bruce Mau Design
展示の内容
全体図はこのような形。説明が多め。そしてiPadを使ってインタラクティブに、やっぱり説明が読めるコーナー。
好きなことをしよう。ブルースマウ。Rethinking Design。
翻訳
好きなことをしよう(Work on What you Love)はものの見方の変化や革命的な解決方法の創造を助ける、デザインの概念を大きく変える24の原理の1つとなります。30年かけて作りました。この起業家精神的なアプローチのおかげで、プライバシーと信頼のある新しいテクノロジープラッフォトームと、世界ブランドとしての持続可能なプラットフォームを確立した、グアテマラに大きく変化をもたらした社会改革のプロジェクトへの参加を可能にしました。
その中でも好きなことをしようと言うのは一番重要な概念と言えます。エナジーと情熱をつなげ、心と脳をつなげ、貴重な時間となんでもできる気がするという原始的な気持ちをつなげました。
この展示の内容は、過去の作品や現在取り掛かっている作品の初期の段階からデザインへ落とし込むまでの概説を表現しています。
ブルースマウの過去の作品
未完成の成長のマニュフェスト43項目
An Incomplete Manifesto for Growth → Manifesto ProjectManifesto Project
翻訳(1~28項目)
1. 新しい出来事で自己の変化を促す。
成長には不可欠。
2. 「良い」を忘れる
よくやろうと思う気持ちは成長を様投げる。
3. 結果よりプロセスが大事
結果がプロセスを産んだ場合、一度やったことしかできなくなる。
4. 経験を愛そう(醜い子供でも愛するように)
喜びは成長の糧になる。素晴らしい経験のように、仕事においても試行錯誤を繰り返して、自由を活用しよう。
5. 深くまで
深くまで行けば行くほど、価値のあるものを見つけられる可能性が高い。
6. アクシデントを利用する
一つの質問で間違った答えが、他の質問で合っていることもある。間違えをストックしておこう。違う質問をしよう。
7. 勉強する
スタジオは勉強の場。仕事のために必要というのを理由に勉強をしよう。みんなに利益を与えることになる。
8. 漂う
目的もなく彷徨う。近隣を探索する。判断を欠如する。批判を止めてみる。
9. とにかく始める
ジョン・ケージは、どこから始めたらいいかわからないというのは、人々共通のそれをやらない理由であるといった。彼のアドバイスは、とにかく始めてみる。
10. 誰もがリーダー
成長はいつでも起こりうる。やって学ぶこともある。誰でもリーダーを経験しよう。
11. アイディアを育てる
世に出されたものを編集する。アイディアはダイナミックで流動的で、持続可能な生活を可能なものである必要がある。一方で世に出されたものは、決定的な過酷さから恩恵を受けることもある。高い確率でアイディをを世の中にだそう。
12. 動き続ける
マーケットに合わせるのは成功の確率を上げる。それに逆らえ。失敗と変更を練習の一部と捉えよう。
13. ゆっくり
時間軸に合わせることをやめると、驚きの出来事が自然と出てくることもある。
14. かっこよくなるな
かっこいいとは喪服を着た保守的な恐れだ。そのような考えから解き放たれよう。
15. 馬鹿な質問をする
成長は憧れと無知を糧にする。質問ではなく答えを取りに行こう。子供から学ぶことが多いことを想像してみよう。
16. コラボレーション
同僚とのスペースは衝突、摩擦、闘争、奨励、そして素晴らしく大きなクリエイティブを生むポテンシャルがある。
17. __________
意図的に空白にした。これから生み出すアイディアや他の人のアイディアにスペースを与えよう。
18. 夜更かしする
遠くに行き過ぎたり、夜更かし過ぎたり、働きすぎると不思議なことが起こる。まるで世界から切り離されたかのように。
19. 比喩を活用する
すべてのものは見た目以上の力がある。そのものが本当に意味することを使っていこう。
20. 時間は起源
今日は昨日の子供で明日の親。今日やったことは明日を生む。リスクには注意をして。
21. 自分の中で繰り返す
好きだったらもう一度やってみよう。嫌いでももう一度やってみよう。
22. 自分のツールを作る
ユニークなものを作るために自分のツールを作る。小さなツールでも大きな変化をもたらすことがあることを覚えておくこと。
23. 誰かの肩の上に乗る
達成した人の肩に乗れば、ずっと遠くまで見渡せる。
24. ソフトウェアを避ける
ソフトウェアの問題は誰もが持っている。
25. 机をきれいにするな
夜に見つからなかったものも、朝に見つかるかもしれない。
26. 受賞にこだわるな
とにかくするな。よくない。
27. 左のページだけを読む
マーシャル・マクルーハンはこれをしていた。情報量を少なくてして、"ヌードル"と呼ばれる場所から出る。(補足:ヌードルには、頭、まぬけという意味)
28. 新しい言葉を作る
語彙力をつける。新しい状態は新しい考え方を必要とする。その考え方は新しい表現方法を必要とする。その表現方法は新しい状態を生み出す。
続き
翻訳(29~43項目)
29. クリエイティビティは頼るデバイスではない
テクノロジーを忘れること。自分の頭で考えること。
30. 組織=自由
デザインや他の分野での本当の改革は状況から起こる。その状況はいつも協力的に扱われたいくつかの事業から形成される。例えばフランク・ゲーリーはスタジオが予算を達成する時に初めてビルバオ(スペインの場所。ここではゲーリーが建築を担当したビルバオグッゲンハイム美術館を指していると思われる)を意識することができた。クリエイティブと求められているものを分ける神話を、レナード・コーエンは「過去の輝く人工物」と呼んだ。
31. 金を借りるな
これもフランク・ゲーリーのアドバイス。金銭的な余裕が、想像力のコントロールを可能にする。ただこれを守るのは以外と難しいし、何人も失敗している。
32. 注意深く聞く
一緒に仕事をする人は私たちの中に入ると、思ったよりも曲がった複雑な世界観を持たらす。詳細と、わずかなニーズや要望や野望を聞いて、私たちの世界を作ろう。
33. 外に出よう
世界は、テレビやネットや綺麗でインタラクティブなCGよりも、素晴らしい。
34. 真似る
できる限り真似る。そうしても違いははっきり出る。リチャード・ハミルトンバージョンのマルセル・デュシャンの大ガラス(彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも)を見るだけでそれは分かる。
35. 間違いを早くする
これは私の考えではなく、アンドルー・グローヴのものによる。
36. グズグズするな
もし言葉を忘れたら、Ellaがしたように、言葉ではなくて、何か他のものを作ればいい。
37. 壊せ、伸ばせ、曲げろ、潰せ、裂け、折れ
38. もう一方の先端を探せ
素晴らしい自由はテクノロジーの利用を止めた時に存在する。テクノロジーの先端を見つけることはできない。なぜなら今足で踏みつけているから。古くなった技術や経済の循環によって廃れた備品を使ってみよう。まだ可能性は秘めている。
39. コーヒーブレイク、タクシーに乗る、控え室
本当の成長は意図的に動いていないところでよく起こる。Dr.スースはそれを「待合室」(the waiting place)と呼んだ。ハンス・ウルリッヒ・オブリストは一度、科学とアートのカンファレンスを開いた。ただそのカンファレンスには、パーティと談笑の場とランチと飛行機の到着以外、何もなかったのだ。結果は大成功。現在も続く様々なコラボレーションの種を蒔いたのである。
40. 地上にいることを避け、囲いを飛び越える。
規律や体制は、創造的な生活を抑制する。多方面にわたって複雑で革新的なプロセスを使い、理解しようと努力している部分はある。ただ私たちの仕事は、その囲いを越えて地上を駆け巡ることなのだ。
41. 笑う
スタジオに来る人に、みなさんよく笑いますねと言われる。これに気がついたので、私はそれを、自分を表現するのにどのくらい快適かのバロメーターにしている。
42. 覚えておく
成長は歴史からのみ出来上がる。記憶のない革新はただのノベルティだ。歴史は成長の道筋を教えてくれる。しかし記憶は完璧ではない。記憶は劣化し、瞬間や出来事のイメージの断片のつなぎ合せになる。この事実が、現在ではなく過去の質への気づきとなった。つまりすべての記憶は新しいもので、部分的なものは違うソースからであり、成長へのポテンシャルそのものを意味する。
43. 人々に力を(Power to the people)
うまくコントロールできている時にだけ、遊びが生まれる。自由でない限り、自由に反対できない。
プロジェクトとそれにまつわるセオリーの紹介
プライバシーや信頼やインパクトのために新しいテクノロジーをデザインできるか?
パーソナルプラックボックスプロジェクト
「自分の時間をデザインしよう」
「最悪を探しておこう」
「自分の経済状況をデザインしよう」
「質と視覚化。見ることは信じること」
「美との競争」
チャレンジを先頭に、教育を再デザインできるか。
アリゾナ州立大学プロジェクト
「森で迷った想定をする
より良い未来のために社会的運動をどのようにデザインするか。
グアテマラプロジェクト
「楽観的な事実から始めてみる」
世界的な企業が不滅をデザンした時、何が起こるか。
コカコーラ、ポジティブに生きるプラットフォームとEmeco 111 Navy Chairプロジェクト
「不滅のデザインを永遠に考えよう」
「見えないものをデザインする」
未来のデザインについてのプロジェクトをデザインする学校をデザインできるか。
国境なき教会と巨大変化プロジェクト
「デザインによりもたらされる、ファーストインスパイヤーデザインリーダーシップ」
「そこからの脱出方法を教えてくれる人、そしてそれを実行する人」
生物多様化に関する世界で初めての美術館を、どう定義してどうデザインするか。
バイオムセオ:パナマ
「私たちは自然から離れているわけでも、それを超えているわけでもない」
デザインドリブンな企業という意味は?
ワンフリードマンbyデザインプロジェクト
「建設デザインのためのプラットフォームのデザイン」
PDCA的に回す。
↓詳細
「スケッチ:やあみんな、失敗しよう」
iPadを使った説明
会場にある全てのセオリーが一気に読める。
iPadでは気になるものをタップすると、それぞれ詳しい説明が読める。
「自分のマドンナカーブをデザインしよう」
新しい曲線を描くのだ。という理論。
文章がかなりポエムな感じなのですが、デザインの歴史を勉強すると、デザイナーって本当、思想家だなぁと思うことが多々あるので、これは正しい姿の一つと言える気がします。( 翻訳するときポエムポエムしないように気をつけたのですが・・・)
成功しているデザイナーは自分の意志やセオリーを持って、デザイナーというよりはアーティストに近い存在になってるのかなぁと常々感じています。
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- 作者: Bruce Mau,Jennifer Leonard,Institute Without Boundaries
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- 発売日: 2004/10/01
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